2012年3月19日月曜日

SFと科学 グレッグ・イーガン「宇宙消失」と小澤の不等式

最近、グレッグ・イーガン著の宇宙消失を読んだ。
それから、今月号の日経サイエンスの特集は小澤の不等式だった。
日経サイエンス  2012年4月号 特集:小澤の不等式
どちらも量子力学の観測問題をテーマとしたお話だったので、比較してみた。

宇宙消失
ジャンル: 物語
初出:
1992 英語原著出版(原題: Quarantine)
1999 日本語訳出版
観測の意味: 観測主体の意識が重要な意味をもつ

小澤の不等式
ジャンル: 科学
初出:
2003 Ozawa, M "Universally valid reformulation of the Heisenberg uncertainty principle on noise and disturbance in measurement" Phys. Rev. A 67, 042105-(1--6) (2003)
観測の意味: 観測を客観的な実験として扱える


正確さを失わないで書評を書けそうにないので、感想を少しだけ書く。
(物理の話は、文庫本の最後についている琉球大の前野昌弘先生の解説が
的確でわかりやすい。この方の ウェブページもおもしろい。物理を勉強すると物語の背景がわかるようになるので、Hard Sience Fiction はよりおもしろくなると私は思う)

感想
モッドがない私たちは、小さい確率でしか起こらないことを起こるように望んでも、多くの場合は願いどおりにならない。でも、古典的な意味で、確率を変えることはできる。
たとえば、バランスのとれた食事をしていれば、そうでない場合に比べて健康的でいられる確率があがる。早起きすれば、有意義に一日をすごせる確率が上がる。
これらの確率に関する事実を踏まえて、食事や起床時間をどうするかを意識的に決めていくことができるのが、自我と知性を持った人間なのだと思う。